棋戦:将棋ウォーズ(10分) 開始日時:2016/09/19 10:26:04 終了日時: 手合割:平手 先手:kendi44 2級 後手:対局者 初段 手数----指手---------消費時間-- *他の棋譜は↓から見れます。 https://shogi.io/@kendi44 ------------------------ ヨーヨーおじさんには5つの悩みがあった。 一つ目は仕事のことである。 読者の諸君には信じられないことかもしれないが、ヨーヨーおじさんは仕事の面では「有能」を通り越して「天才」である。紙一重で「バカ」かもしれない。彼の天才性を証明するためには紙面が足りないので、ここでは証明を割愛する。 彼に掛かる期待は大きく、大企業特有の小回りの効かなさも災いして、彼はいつの間にか2〜3人分の仕事を一人で任されるようになった。一年半前から続く激務はここのところますます烈しさを増し、彼は心身ともに消耗しきっていた。こなせばこなすほど増えるのが「仕事」というもので、自転車操業でなんとかここまで来たが、さすがにそろそろ限界の仕事量になりつつある。 2つ目の悩みはネタ将としての芸風である。将棋ファンには様々な種類が居り、◯◯将と区別して呼ばれる。例えば、観る将(観る専門の将棋ファン)、指す将(自分でも将棋を指す将棋ファン)、ネタ将(面白い将棋ネタを提供することに夢中な将棋ファン)などなど。風の噂によれば、ぴよ将棋を作っているPONTA氏は「作る将」らしい。 彼は最近、念願叶ってネタ将への第一歩を踏み出したのだが、この芸風で良いのだろうかと自問している。彼は自戦記を常に全力で書いている。できる限りネタを交えながら、将棋の面白さを将棋がわからない人へも伝わるように苦心している。ただ、ネタを惜しみなく出していくこのスタイルは労力も大きいし、ネタ切れの心配とも常に戦わなければならない。彼はもう少し省エネ路線でネタを温存して行くべきか、常々、頭を悩ませている。 3つ目の悩みは周囲のヨーヨー人から「あいつは将棋ばかり指して、ヨーヨーから足を洗った」と後ろ指を指されることである。ヨーヨー自体は続けている。最近、左回りのヴァリアブルスライサーが上がるようになってきた。ヴァリアブルスライサーはスティアケースやスクリューとも呼ばれ、2つのヨーヨーをミルクザカウからヴァーティカルパンチまで身体を捻りながら持ち上げる、なかなか高難度の技である。昔のヨーヨー人なら出来る人も多いが、シングルハンドストリング全盛の昨今で新たにこの技を習得しようとする者はさほど多くない(ただし、彼は右回りは全くできない)。ヨーヨーはやっている、俺の2Aを見てくれ、ということを声高に主張したい。 ところで、先日、ヨーヨー世界2位の某氏が学校では「囲碁将棋部」であることが発覚した。某氏のヨーヨープレイは世間的には評価されているものの、決してヨーヨーおじさんの好みではない。しかし、某氏と話してみたおじさんは「なんや、こいつ良いやつやないか。」とコロッと手のひらを翻した。おじさんはちょろいのである。「必殺、手のひら返し、次の大会では応援してやろう」と、おじさんは上から目線で考えた。 4つ目の悩みは推しメンの卒業である。ヨーヨーおじさんは一時期、アイドルオタクであった。10代の頃、「アイドルなんてクソだぜ!Rockを聴け!Rockを!」などと強がっていた反動が20代後半になってやってきた。ライブに握手会、ラジオの公開録音……行ける範囲では皆勤賞で某アイドルユニットに会いにいった。アイドル達の煌びやかな笑顔と透き通るような歌声、キレのあるダンスとキュートなお尻は仕事の疲れとストレスを的確に癒してくれた。 2年ほど前、某アイドルユニットから喜屋武ちあきが卒業したとき、「ふえええ、きゃんちゃんが卒業しちゃうよおおお」とヨーヨーおじさんは三日三晩泣き狂った。その後、「もうアイドルなんて推さないよ絶対」と心に誓い、アイドルオタクからは足をあらったヨーヨーおじさんだっだが、さらに次点の推しメンである、京本有加が卒業したときばかりは卒業公演のDVDと限定Tシャツを取り寄せ、涙を流した。さらに、来春、浦えりかちゃんと虎南有香ちゃんが続けて卒業すると言う。浦えりかちゃんは言うなれば「天使」であり、将棋界で例えると「藤田綾女流二段」である。相次ぐ推しメンの脱退を前に、浦ちゃん無しで彼はどうやって生きていけば良いのであろうか? そして5つ目の悩みがこれである。相振り飛車急戦への対処、相振り飛車を指す上で避けることのできない急戦への振る舞い、このことに彼は頭を悩ませていた。 1 7六歩(77) ( 0:02/00:00:02) *先手、ヨーヨーおじさんの第一手は常に▲7六歩である。それ以外の指し方は彼の美学にそぐわない。 この日も堂々と▲7六歩を着手した。 2 3四歩(33) ( 0:02/00:00:02) *ならば、後手も△3四歩。お互いの角道が開く、王道中の王道の一手である。 3 6八飛(28) ( 0:03/00:00:05) *ここでヨーヨーおじさんは四間飛車に構える▲6八飛車。四間飛車は彼の得意戦法である。攻防のバランスに優れる四間飛車は振り飛車の王道。彼は常に王道を好む。 4 3五歩(34) ( 0:03/00:00:05) *ここで相手は△3五歩と歩を伸ばす。三間飛車を明示した一手だ。四間飛車対三間飛車は後手側に先攻の権利がある。いきなり殴り合いの展開にしましょう、と相手は打診している。相手は初段。嫌な予感がヨーヨーおじさんの脳裏をよぎる。 5 4八玉(59) ( 0:04/00:00:09) *ここでヨーヨーおじさんは玉を上がる。強い戦いをするためにまずは防御を固める、定跡の一手だ。 6 3二飛(82) ( 0:05/00:00:10) *後手は予想通りの飛車回り。急戦の匂いが強まる。この局面はどう指すべきか? 7 6六歩(67) ( 0:10/00:00:19) *▲2二角成も有るには有ったが、ヨーヨーおじさんは急戦を拒否する▲6六歩。角交換になれば乱戦となるが、 角道を止めれば乱戦を拒否できるはずである。その思考は悪くなかったが、後手は構わず△3六歩と乱戦を志向する。 8 3六歩(35) ( 0:04/00:00:14) * 9 2八銀(39) ( 0:04/00:00:23) *▲同歩 △同飛 の形はなんとなくイヤな予感がした。▲2八銀と飛車先を受ける。 10 5五角(22) ( 0:05/00:00:19) *ここで後手は戦力を3筋に集める△5五角。▲3六歩とは応じられなくなった。 11 5六歩(57) ( 0:50/00:01:13) *角を追えないかと、▲5六歩と突く。しかし、これは少し遅い気がする。 12 3七角成(55) ( 0:03/00:00:22) *いきなり角を切った。この馬は取るしかない。 13 3七銀(28) ( 0:02/00:01:15) *▲同銀、△同歩成、▲同桂と角銀交換になる。角銀交換なら先手得のはずだが、次の一手で駒損を回復される。 14 3七歩成(36) ( 0:02/00:00:24) * 15 3七桂(29) ( 0:01/00:01:16) * 16 3六歩打 ( 0:03/00:00:27) *桂馬の頭は弱点の一つ、後手は△3六歩打で桂馬を狙う。 17 3八歩打 ( 0:09/00:01:25) *▲4五桂 と跳ね出すのが正解だったが、飛車の効きが玉のそばまで届いているのが嫌だった。▲3八歩と二枚替えを甘受する。 18 3七歩成(36) ( 0:06/00:00:33) *これには予定通り、△同歩成と取り込む。王手なので、取るしかない。 19 3七歩(38) ( 0:02/00:01:27) * 20 4五桂打 ( 0:02/00:00:35) *△4五桂打で彼は痺れ上がった。飛車を成らせたら負けなので▲3八金だが、次の△5七銀打で王手飛車取りを見せられては指す手が無い。 21 3八金(49) ( 0:11/00:01:38) * 22 5七銀打 ( 0:03/00:00:38) *この一手を前にヨーヨーおじさんは戦意喪失。わずか22手で投了を告げた。 何が悪かったのだろう?おじさんは苦悩し、項垂れる。 「やぁ、毎度毎度、お困りのようだね。」 おじさんが顔を上げると、そこには二匹のカラーヒヨコがいた。合成着色料で紅く染め上げられた二匹、その名は「ぴよ将」と呼ばれている。 続く↓ https://shogi.io/kifus/8538 23 投了 ( 0:00/00:01:38) まで22手で後手の勝ち