棋戦:将棋ウォーズ(10分) 開始日時:2016/09/19 13:22:45 終了日時: 手合割:平手 後手の持駒:角 金二 歩  9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・ ・v玉|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v香|二 |v歩 ・v歩 ・ と と ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩v角 ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|五 | ・ 歩 歩 ・ ・ 銀 歩 ・ 歩|六 | 歩 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ 歩 ・|七 | ・ ・ 銀 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:飛 銀 桂二 歩三  先手番 先手:kendi44 2級 後手:初段 手数----指手---------消費時間-- *https://shogi.io/kifus/7494の後日談 ヨーヨーおじさんが自戦記を初投稿した翌日、おじさんはデレッデレに浮かれていた。彼の処女作(https://shogi.io/kifus/7494)に対して、皆が面白かったと褒めてくれたからである。この男、単純極まりない。煽てりゃ木ぐらい登っちゃうタイプだ。 しかし、そこに一匹のヒヨコがやってきた。縁日で売られていそうな色のヒヨコだ。 「おじさん、おじさん、自戦記の評判良いみたいだね。」 「やぁ、今、Twitter界隈で人気のアヒルくんじゃないか。」 「アヒルじゃないよ!ヒヨコだよ!うさぎでもないよ!」 「スマンスマン、羽生善治三冠夫人のTwitterで毎日毎日、アヒルとうさぎを眺めるのが日課になっているものでな。」 おじさんはしれっととぼけた。このヒヨコの名は「ぴよ将棋」。iPhoneやAndroidで動作する将棋アプリである。無料ソフトの分際でなかなか高い棋力を持っている(アマチュア級位者の基準からすれば、だが)。しかも、デザインがなかなか可愛いのだ。アマチュア将棋家達の中では「一家に一匹、ぴよ将棋」が新しい格言となりつつある。 「ねぇねえ、ところで、ちょっと棋譜を見せてくれないかな?一瞬だけ少し気になったことがあるんだ。」 「気になったこと?」 「それはここからの局面なんだけど……」 1 6一飛成(68) *「この飛車成は良い手だったね。あとから挙げた次善手の▲3五歩もなかなか良かったけど、こちらのほうが勝るかな。」 おうおう、なかなか観る目があるアヒルじゃないかとおじさんが感心していると、ヒヨコが言葉を続けた。 「でも、この将棋はおじさんの負けだったね。」 2 4六角(24) *「終盤の▲3三桂打の詰めろのことか?確かにあれはピヨった、いや、日和った一手だったが……」 ヒヨコは愛らしく首を振る。 「違うよ。その前の局面のことさ。この王手に対する最善手は▲6七玉だったんだ。おじさんは▲5六玉と上にかわして王手飛車取りを喰らったよね。まぁ、それは仕方ないとして、その後が最悪だったんだ。」 3 5六玉(57) *ヒヨコはパタパタと駒を動かす。問題の局面を提示するために。 4 8三角打 *「ここだよ。ここが問題なんだ。ここで▲6七玉と指していれば、まだわからなかった。おじさんの次の一手は最悪だよ。これまでの努力のすべてを無にする大悪手だ。」 5 6五龍(61) *「いや、しかし、この手しか無いだろう!ただで龍はやれない!」 おじさんは必死に反駁する。 「自戦記のなかで『龍を取られても負けじゃない』、って言ったのはおじさんでしょう?敵陣の中にいる龍なんて、くれてやれば良かったんだ。」 耳まで真っ赤になるほど熱くなっているおじさんとは対照的に、ヒヨコの言葉は東北の冬のように冷たい。 「龍を取られても負けじゃないっていうのは条件次第さ。その龍をその場所で取られたら、先手玉は詰む。即死だよ。」 6 6五角(83) *「なん……だと……?」 おじさんは言葉を失う。 「簡単さ。この局面では△同角が成立する。おじさん、5〜6時間掛けて必死に検討しながら自戦記書いたのに何で気付かないのかな?」 このヒヨコ、可愛い見た目とは裏腹になかなか黒い。おじさん、何か、ヒヨコを怒らせることでもしたか? 「さぁ、おじさん、この次はどう指すの?▲同玉とは取れないはずだよねぇ? △5五金打 ▲7五玉 △7四金打で詰むからね。金が二枚と飛車も有るんだ。上には逃げられないよ。」 「▲4五玉だ!」おじさんは必死で叫ぶ! 「だからさ、上には逃げられないっていってるじゃない。それも △5五金打 ▲4四玉 △4五金打 ▲3四玉 △2四飛車打で捕まるよ。」 7 6七玉(56) *おじさんはやむなく▲6七玉と駒を動かす。 「そうだよ。それが一番手順が長引く逃げ方なんだ。数手前にそこに逃げ込めていれば負けは無かった。でももうダメさ。 この局面は9手詰めだよ。よく考えてごらん。」 8 5六金打 *「金はトドメに残せ、ってよく言うでしょう?でも、この局面では2枚の金を最初に使うのさ。級位者のおじさんにはちょっと難しいかもしれないね。」 9 7七玉(67) *「そうだね、下に逃げたら簡単に捕まるからそっちに逃げるしかないね。 でも、そっちに逃げても結論は変わらないんんだけどね。」 10 6六金打 *「これが見えたらなかなかのもんだよ」と言いながらヒヨコは金将と書かれた木片を盤に叩きつける。パチン!と大きな音がした。 11 8八玉(77) *「8七に逃げる手も考えたくなったんじゃない?それには△7六角があるからダメダメ。簡単に詰むよ。」 おじさんにはこのヒヨコが悪魔に見えてきていた。 12 8七歩打 *ヒヨコが無邪気に笑う。 「それでこの歩が激痛なんだ。銀で取ったら退路が塞がるし、玉で取ったら今度こそ△7六角だよ。」 13 8七銀(78) *「さっきも言った通り△7六角は詰むから▲同銀しかないよね。ここまで来たら簡単な三手詰めだから、おじさんにもわかるよね?」 14 7九銀打 *「そうそう♪」 15 9八玉(88) *おじさんは声も無く、うな垂れた。目元が涙で微かに光っている。 16 8八飛打 *「ほらね!ピッタリだ!気持ち良い詰みでしょう? 自分の駒台の駒を全て使った詰みなんてゾクゾクするよねぇ!だから言ったんだ。おじさんの負けだったって。」 ヒヨコは鼻息を荒くする。 「おじさんが僕のことをアヒルだなんて呼ばなかったら黙っておいてあげるつもりだったんだ。おじさん、だいぶ良い気分だったみたいだからさ。 ……だけど、許せないよね!たかが級位者のおじさんが将棋界のNEWアイドルである僕のことをそんなB級戦法みたいな名前で呼ぶなんてさ!これからは『ぴよ師匠』、『ぴよ師匠』って呼んでよね!わかった!?」 おじさんは嗚咽を堪えながら「わかりました……」と小さく返事をした。 かくして、おじさんはこのクソッタレなヒヨコのことを師匠と敬う羽目になったのだった……。そして、おじさんは「いつの日か、このヒヨコをぶっ殺してやる……。」と硬く心に誓うのだった。 これにて、ヨーヨーおじさんの将棋自戦記part1.5 後日談 ヒヨコズ・エネミー・ナンバーワン 閉幕。 あとがき 昨日、自戦記を書き上げてから気紛れでぴよ将棋を使って棋譜解析をした結果、私はようやく知った。やはり負けていたことを。 明らかに手順前後の行為であったが、怪我の功名、その結果、短編小説もどきができた。構想半日、執筆ニ時間半の超大作である。 「勝ちだと思ったが、あとでよく考えてみると負けだった」というシチュエーションは、某将棋マンガを思い出す展開で、とても興奮した。事実は小説よりも奇なり。現実は厳しく、将棋は面白い。 ということで、最後まで読んでくれてありがとうございました。それでは次回、「ヨーヨーおじさんの自戦記part2」でお会いしましょう。それでは、しばしの間、さらばだ!