手合割:平手   手合割:平手 先手:石田流三間飛車 後手:新xaby角戦法 手数----指手---------消費時間-- *◆【第3回 誰も知らないマイナー戦法】 単純明快!「GAVA流 鏡の左早繰り銀」Part3『対升田流▲7七銀 強制相居飛車型』 前回のPart2(https://shogi.io/kifus/256557)では、GAVA氏が考案した「早石田破り新xaby角戦法 鏡の左早繰り銀」へ必ず組めるマル秘手順を紹介しました。 たった24手の手順を覚えるだけで、初心者の方でも石田流を一方的に叩き潰す事ができ、あまりの破壊力に他の戦法が使えなくなるほどの威力でした。 これでは先手は3手目▲7五歩と突く早石田戦法を使う事ができず、「もう石田流を封印するしかない…。」と思った方もいるでしょう。 だって3手目▲7五歩の瞬間に、後手は一切変化の余地を与えない4手目△8八角成の角交換をしてくるので、この角交換相振りの展開は絶対に避けられないのですから…。 …しかし、まだ諦めるのは早い。 実はこの4手目△8八角成という手は、升田式石田流を考案した升田幸三 実力制第四代名人が当時1970年に先手を持った時に指されており、この手にも升田流独自の対策があるのです。 *---------------------* 作者:マイナー将棋ブログ https://minorshogi.com/ 本データ掲載記事:https://minorshogi.com/3st-minor-tactics-that-no-one-knows-part3/ 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *それではさっそく初手からの解説を始めましょう。 * *まずは角道を開ける。次に▲7五歩と突いて、石田流三間飛車を狙うための絶対手だ。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *本戦法は後手の戦法。 3 7五歩(76) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲7五歩と突き、石田流を明示します。 4 8八角成(22) ( 0:00/00:00:00) *前回のPart1.2(https://shogi.io/kifus/256557)で出た、4手目△8八角成。 これで先手に▲6六歩~▲7八飛~▲7六飛の「石田流本組み」に組ませる事を阻止します。 5 8八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲同銀と取る。 6 2二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *後手は△2二銀と上がる。 * *今まではこの局面で先手は▲7八飛と指していましたが、それだと△3三銀から後手は鏡の左早繰り銀へ組む事ができ、後に△5四角と打って先手の8七地点と2七地点を狙う事ができます。 7 7七銀(88) ( 0:00/00:00:00) *ここで▲7七銀!が升田式石田流を考案した升田幸三 実力制第四代名人が当時1970年に先手を持った時に初めて指した一手。 この手の狙いは、ここから次に▲8八飛のダイレクト向かい飛車を狙う事です。 そうなれば、後手が△3三銀~△2二飛として相振り鏡の左早繰り銀を狙おうとしても、以下先手ペースとなります。 つまりこの▲7七銀は後手が4手目△8八角成と角交換してきた手を逆用して、一直線に▲8八飛と振る事で角交換振り飛車にしてしまおうという狙いです。 単純ながら、非常に理にかなった手で、この7手目▲7七銀で新xaby角 鏡の左早繰り銀は終わってしまったかのように思えますが…。 ここで新xaby角考案者のGAVA氏が考えた、名人升田幸三へ挑む、ある角打ちを放ちます。 先手の振り飛車を封じる、あの旧xaby角の心を継いだ角打ちとは? 8 6五角打 ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント1 「升田流の▲7七銀には△6五角が絶対!これで先手の形を乱しにいく。」 先手の8七・4七地点の両方を狙う、この△6五角!が▲7七銀と上がった手を咎めに行く一手です。 この手自体はこの局面を迎えたらすぐ見えるでしょうが、問題はここから先手の受けに対してどのような構想を立てるかです。 ここでは先手に2つの受けがあります。 それは▲3六角と▲7六角(Part4で解説)です。 この2つの手は8七・4七地点の片方を守りつつ、後手陣へ角成りを見せる攻防一体の角打ちです。 さて…この角打ちに後手が見せる新構想とは…? 9 3六角打 ( 0:00/00:00:00) *まずはこの▲3六角の変化です。 この手は4七地点を守りつつ、▲6三角成を狙った攻防一体の一手。 もしこの局面で後手が△8七角成なら以下▲6三角成 △5二金右 ▲3六馬 △3三銀 ▲6八飛…が一例。 形勢は互いに駒損なしで互角なものの、先手は玉を囲ってから▲6六歩~▲6五歩と後手の薄い6筋を狙う手があり、先手が主導権を握る将棋となります。 というわけで…10手目で角を成り合う手は、形勢互角なものの後手やや不満となります。 なので10手目では後手に別の構想が必要になるのですが…。 10 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント2 「△6五角に▲8八飛は△3五歩と角を追って後手十分。よって先手は飛車を振れない。」 ここから数手で先手が青ざめる事になります。 まずは後手△5二金右と上がる手が細かい手。 これは△6二銀と上がる手を保留する事で、後に△7二銀と上がる棒銀戦法を狙えるようにしています。 ちなみにここで▲8八飛なら、以下△3五歩! ▲2五角 △3三銀! ▲6六銀 △5四角 ▲2八銀 △2四歩 ▲1六角 △4四歩…が一例となり、先手の美濃囲いを封じつつ玉頭へ位を取れた後手十分です。 先手からすると囲い合っても乱戦に持ち込まれても苦しい変化ばかりで、とてもじゃありませんが11手目で▲8八飛と振る気は起こりません。 なのでこの10手目の△5二金右には飛車を振る事ができず、 別の手で8七地点を受ける必要がありますが…。 11 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *先手は8七地点を受ける別の手を指しますが、ここからたった4手で将棋の様相が変わってしまうのです。 * *先手は▲7八金と上がるしか8七地点を手堅く受ける手はありません。 12 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *対する後手は△8四歩!と突き、先手の▲6六歩に△9二角・△8三角の逃げ道を作ります。 * *この△8四歩に対し先手が何もしないと、次に△3五歩 ▲2五角 △2四歩で、先手の角を動かした後に△4七角成がある後手有利です。 13 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *なので先手は△8四歩に▲4八銀(▲3八銀・▲5八金右でも良い。)と上がり…。 14 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント3 「9手目▲3六角には△5二金右~△8四歩~△7二銀で完全互角の相居飛車に!振り飛車党の先手を不慣れな将棋へ誘いこむ。」 後手は△7二銀!と上がりました。 この14手目△7二銀の局面は完全に互角。 ここからは互いに矢倉囲いへ組んでいき、純粋な「相居飛車の経験が問われる将棋」となります。 もう後手には先手陣を壊滅させるような秘密の手順はありません。 しかし…、これこそが旧xaby角戦法の考案者GAVA氏が狙っていた『"早石田封じ"新xaby角』の呼び名に相応しい局面なのです。 なぜならこの先手陣を見ての通り、もう先手は飛車を振る事ができず以下居飛車にするしかありません。 先手は一応手得しているのですが▲7五歩型なので、後手からその伸びた歩を狙われやすく得をしているとは言い難い形です。 形勢自体は両者角を手放して駒損もないため互角ですが、先手は手得の優位を失い、しかも「石田流党が慣れない相居飛車の将棋」に持ち込まれてしまいました。 こうなると居飛車経験の多い後手の方が構想を立てやすく、実戦的には先手やり辛い将棋となっています。 この考え方は『早石田封じ 旧xaby角戦法』で何度も出た「振り飛車党に慣れない居飛車を強制させる」思想ですが、旧xaby角の時は、形勢が不利になる段階で強引に6手目△5四角を打っていました。 「後手不利になる事を覚悟して角を盤上に打ち、先手に飛車を振らせない事だけを狙った戦法」が『旧xaby角戦法』でしたが。 角を打つタイミングをずらすことで「相振り飛車でも居飛車感覚の早繰り銀を狙え、升田流の7手目▲7七銀に対しても形勢完全互角の相居飛車の将棋」に持ち込む事を実現したのが、この『新xaby角戦法』なのでした。 つまりこの『新xaby角戦法』は、『旧xaby角戦法』で不利を覚悟しながら狙っていた手を全てバージョンアップさせ、形勢的にも指せるようにした、まさに早石田封じの"新"たな"xaby角"なのです。 15 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *先手は一度▲6六歩と突き、一度後手の6五の角を追います。 16 9二角(65) ( 0:00/00:00:00) *これに対し後手は△9二角と9二の地点へ角を引きます。 * *この9二の位置が大事な位置で△8三角では駄目。 *△9二角と引く手が、のちに△7二銀と使うルートを作るのです。 17 5八金(49) ( 0:00/00:00:00) *先手は玉を囲う準備をする。 18 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00) *後手は一度△3四歩を守るために△3三銀と上がる。 19 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲2六歩と突き、▲3六角の逃げ道を作りつつ、次の▲2五歩を用意。 20 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4二玉と囲う。 21 6七金(58) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲6七金右と上がり、金矢倉の外壁を作る。 22 3二玉(42) ( 0:00/00:00:00) *なお後手玉の囲いは今回は△3三銀~△4二玉~△3二玉としましたが、ここは△3三銀~△4二玉~△3二金と組む手も有力。 * *このあたりは特に大きな優劣はないので、指し慣れた囲いへ組んでください。 23 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *先手もそろそろ玉を囲う。 * *さぁ後手はこれより先手陣へ仕掛けるのですが、どこをどのように狙えば良いのでしょうか? 24 8三銀(72) ( 0:00/00:00:00) *後手は△8三銀!と上がります。 * *この△8三銀が工夫の一手で、この形を作るために14手目△7二銀と上がったのでした。 *もしこれが14手目で△6二銀と上がっていたら、この△8三銀型を作る事ができません。 25 7九玉(68) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲7九玉と引いて待つぐらいしかない。 ここで▲7六銀と上がる手は、以下△7四歩 ▲同歩 △同銀 ▲7五歩 △8五銀 ▲同銀 △同歩と銀交換になり、銀を持ち駒にして次に△8六歩のある後手が攻めの主導権を握り後手ペースとなります。 これより後手は先手の伸びた▲7五歩型を逆用し、攻撃陣を作ります。 26 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *そこで後手は△7四歩から。 27 7四歩(75) ( 0:00/00:00:00) *取る手に。 28 7四銀(83) ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント4 「△8三銀~△7四歩で△7四銀型を作る。先手の伸びた▲7五歩を目標にする。」 △同銀と7筋の歩交換をし、手順に銀を7四の好形へ移動させます。 これで先手が序盤に2手かけて突いた▲7五歩を消す事ができ、後手の一手損はなくなりました。 こうなれば相居飛車的に後手が損な所は一切なく、形勢的には互角なものの後手が先に攻める将棋となり、将棋的には既に先手不満なぐらいです。 なおこの△7四銀型は、次に△8五歩~△7五銀や、次に△7三桂~△6四歩~△6二飛と、攻撃力の高い棒銀・右四間の布陣へ組む事ができ、どうやっても遊ばない理想的な銀です。 この28手目△7四銀の局面は形勢は互角なものの、主導権を握り・慣れた居飛車を後手だけが指していると考えれば、感覚的には後手有利と言っても過言ではないでしょう。 29 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲4六歩と突き、▲4七銀~▲5六銀型を作りに行く。 これより後手には三つの攻めがあり、どれを選ぶかは各々の好みと先手陣の形次第です。 30 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *まずは棒銀の攻めから紹介。 何気ないのですが△9二角の利きに注目してください。 後手は棒銀を狙う場合は△8五歩~△7五銀!と銀を出るのが普通です。 よって△8五歩と突き、次に△7五銀と出る用意をします。 なおここで▲7六歩は△7五歩で効果ありません。 31 4七銀(48) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲4七銀と上がり、▲5六銀型を作る準備をするが…。 32 7五銀(74) ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント5 「△9二角が通っている状態で、先手が▲4七銀と上がったら即△3五歩!」 ここで実は先手、ちょっとした緩手を指しています。 その手はこの▲4七銀なのですが、どうしてなのでしょうか? それはこの局面で、先手が何もしないと△3五歩と突いて4七の銀を取ってしまう狙いがあるからです。 地味に後手の△9二角が利いており…。 この局面で△3五歩に▲4五角や▲1八角だと△4七角成で銀得の後手優勢。 他にこの局面で△3五歩に▲2五角も△2四歩で今度は角の方が死にやはり後手優勢。 これも慣れない先手がやりがちなミスなので、「後手の△9二角の利きが通っている状態で▲4七銀と上がった場合は即△3五歩」で先手の角銀を召し取りましょう。 33 5六銀(47) ( 0:00/00:00:00) *先手は一度▲5六銀と上がり、取られそうな銀を守りながら前へ出します。 34 8六歩(85) ( 0:00/00:00:00) *●「対升田流▲7七銀『強制相居飛車型』」のポイント6 「先手陣を攻める一つ目の攻撃陣は「棒銀」。確実に銀交換を狙え、先手陣の隙を突きやすい。」 しかし既に後手の棒銀が突き刺さる直前で、以下△8六歩から後手は銀交換を狙います。 35 8六歩(87) ( 0:00/00:00:00) *取る手に。 36 8六銀(75) ( 0:00/00:00:00) *△同銀と前に出て。 37 8六銀(77) ( 0:00/00:00:00) *▲同銀と応じ。 38 8六飛(82) ( 0:00/00:00:00) *次に△8七歩~△8八銀の突破を狙っている。 39 8七歩打 ( 0:00/00:00:00) *それを防ぐために▲8七歩と打つが。 40 8二飛(86) ( 0:00/00:00:00) *これで後手は銀交換に成功しました。 この40手目△8二飛の局面は先手の守りの銀を一枚剥がした後手ペースで、以下持ち駒の銀を使って色々な攻め筋があります。 例えば、この40手目△8二飛の局面から△7五銀 ▲8八玉 △8六歩 ▲同歩 △同銀 ▲8七歩 △同銀成 ▲同金 △8六歩 ▲7七金 △5六角 ▲同歩 △8七銀や。 他にこの40手目△8二飛の局面から△5四歩 ▲同角 △5八歩や。この40手目△8二飛の局面で△5四歩 ▲2五歩 △5五歩 ▲同銀 △3九銀…。 さらに少々強引ですが、この40手目△8二飛の局面で△4四銀 ▲2五歩 △3五銀 ▲4五角 △3三玉から次に△4六銀を狙う手もあります。) 後手陣は△3二玉・△5二金型で低い陣形なので、先手に銀を打たれる心配はほとんどありません。 対する先手は3九地点や6九地点などに銀を打たれる隙があり、手が進むにつれて先手は指す手がなくなっていきます。 というわけで、この40手目△8二飛の局面は後手が主導権を握っており指しやすい局面なのでした。 先手は受け身で、こうなってしまうと慣れない居飛車を持っている振り飛車党の先手はとてもやる気が起こらない将棋でしょう。 あと棒銀型の長所は、△7五銀型を作った時に△9二角の利きが通るので、先手の▲4七銀を遠く狙いやすいなどのメリットがあります。 ただし次に紹介する「右四間飛車型」より、攻撃力が劣る点がデメリットです。 一言でいうと「銀を手持ちにして、ジワジワと先手のミスを誘う。」 そんなジックリ型の将棋を好む人に棒銀型はオススメです。 *------------* ●GAVA流「新鏡の左早繰り銀」 Part3 ポイントまとめ 1.升田流の▲7七銀には△6五角が絶対!これで先手の形を乱しにいく。 2.△6五角に▲8八飛は△3五歩と角を追って後手十分。よって先手は飛車を振れない。 3.9手目▲3六角には△5二金右~△8四歩~△7二銀で完全互角の相居飛車に!振り飛車党の先手を不慣れな将棋へ誘いこむ。 4.△8三銀~△7四歩で△7四銀型を作る。先手の伸びた▲7五歩を目標にする。 5.△9二角が通っている状態で、先手が▲4七銀と上がったら即△3五歩! 6.先手陣を攻める一つ目の攻撃陣は「棒銀」。確実に銀交換を狙え、先手陣の隙を突きやすい。 7.先手陣を攻める二つ目の攻撃陣は「右四間飛車」。ハイリスク・ハイリターンな将棋になる。 8.先手陣を攻める三つ目の攻撃陣は「棒銀・右四間複合型」。手厚い攻めだが深い読みが必要。 *------------* ・新xaby角 参考棋譜1『振り飛車封じの角引き』 https://shogi.io/kifus/257777 ・新xaby角 参考棋譜2『"旧"から"新"へ継がれし「筋違い角棒銀」』 https://shogi.io/kifus/257778 *------------* 次 Part4:https://shogi.io/kifus/258780 *------------* 作者:マイナー将棋ブログ(https://minorshogi.com/) 本データ掲載記事:https://minorshogi.com/3st-minor-tactics-that-no-one-knows-part3/ ↑詳しい解説はこちらの記事で。