掲載:マイナー将棋ブログ 手合割:平手   手合割:平手 先手:間宮久夢流 後手:居飛車 手数----指手---------消費時間-- *◆【第2回 誰も知らないマイナー戦法】三段玉からの入玉戦法!間宮久夢流 Part1 今回の『第2回 誰も知らないマイナー戦法』は「三段玉から入玉を狙う戦法」を紹介します。 その名も…『間宮久夢(きゅうむ)流』。 1940年代の昭和のプロ棋士 間宮純一(まみや じゅんいち)六段が考案した、オリジナリティ溢れる、初手から敵陣への入玉を狙う戦法です。 「最も安全な場所は敵陣」という前代未聞の思想で、遮二無二に自玉を敵陣へ送り込む事を本気で実行し、なんと一つの戦法として成立させてしまったのです。 入玉だけを狙う戦法なんて…にわかには信じられないでしょう。 今回紹介する、間宮純一六段が考案した戦法は今から70年前の1940年代に指されており非情に古い戦法。 …ですが当時の将棋雑誌でもほとんど解説されておらず、この『間宮久夢流』を知る者は将棋の長い歴史の中でもほとんどいません。 そしてこの間宮流には実は2つのバージョンがあります。 「初手▲5六歩の久夢流」と「ノーマル振り飛車から始まる久夢流」。 今回紹介するのは『季刊 将棋天国 夏 第14号』で紹介された、2つ目の「ノーマル振り飛車型の久夢流」。 こちらの久夢流は初手▲5六歩型よりも安定感があり、初めて久夢流を指したい方にオススメする入玉入門用の戦法です。 それではこれより… 未だ誰も見たことのない「敵陣内へ作る将棋史上最強の囲い」をお見せしましょう…。 この戦法を体得すれば、特にトライルールのあるネット将棋サイトでの勝率は大幅に上がる事間違いなし…! ようこそ 敵陣こそ楽園…! 久夢流の世界へ…! ------------ 作者:マイナー将棋ブログ https://minorshogi.com/ 本データ掲載記事:https://minorshogi.com/2st-minor-tactics-that-no-one-knows-part1/ 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *本戦法はノーマル振り飛車の出だしから使う。 よって初手は▲7六歩と突く一手。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *本戦法は対抗形の戦法なので、後手には△3四歩~△8四歩から居飛車を指してもらう。 3 6六歩(67) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲6六歩で角道を止める。 これでマイペースな駒組みができる。 4 8四歩(83) ( 0:00/00:00:00) *後手は居飛車なので、△8四歩から飛車先を突いてくる。 5 6八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲6七銀型を作りにいく狙い。 なのでここは代えて▲7八銀でも問題ない。 6 6二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *△6二銀は無難な手。 この銀上がりなら、後手はまだ△5四歩・△6四歩・△7四歩と突く手を保留できている。 居飛車側としては攻撃陣を早く決めてしまうと、そこを振り飛車側に狙われるので手を決めたくないのだ。 7 6七銀(68) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲6七銀型を作る。 この位置に銀を持っていければ、7筋・6筋に手厚く後手の仕掛けに強くなる。 ノーマル振り飛車型の久夢流では、一先ずこの▲6七銀型を作っておきたい。 8 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) *今回の後手は無難に△5四歩型を作ってもらう。 9 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00) *ここで先手は▲5六歩が少し意外な手。 なぜなら、この手は先手からの▲5六銀~▲4五銀の玉頭銀を消してしまったからだ。 玉頭銀が消えると、先手としては▲7八飛・▲6八飛の三間飛車 四間飛車にした時に仕掛けの手が減る。 なので先手は三間飛車と四間飛車の可能性が少し減った。 ここから考えられるのは、▲7八金からの雁木戦法、▲5八飛からのノーマル中飛車などだが…。 果たして先手の戦法は何なのか? 10 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *後手は△5二金右と上がる。 これも形を決めない様子見。 後手としては、先手が居飛車にしてくる可能性があるので△4二玉と上がり辛い。(▲3六歩~▲3八飛の袖飛車で玉頭攻めを狙われるため。) 11 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲4八銀と上がった。 これで先手は振り飛車美濃囲いの可能性がなくなった。(▲2八玉まで囲って▲3八銀と上がる手がなくなったため。) 先手は次に▲5七銀~▲7八金~▲6九玉~▲5八金と囲えば、雁木囲いとなる。 しかし異端の戦法「間宮久夢流」は、こんな簡単に推測されるような戦法なのだろうか…? 果たして…。 12 3二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *後手は△3二銀と上がり、△4二玉~△3一玉と左美濃囲いを狙う。 さらに先手がここで▲2六歩~▲2五歩のように居飛車にしてくるなら、△3三銀から矢倉囲いにもできる緩急自在の手だ。 13 5七銀(48) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲5七銀と中央に二枚銀の形を作る。 この右銀を▲5七銀と三段目に持っていくのが大事な手で、この右銀は後に完成する『久夢流』囲いの最重要の駒になります。 14 8五歩(84) ( 0:00/00:00:00) *なので先手の居飛車雁木戦法を警戒する後手は△8五歩から。 15 7七角(88) ( 0:00/00:00:00) *角を上がって、次の△8六歩を受ける。 16 3一角(22) ( 0:00/00:00:00) *後手は△3一角として、次に△8六歩を狙ってきます。 17 8八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント1:相手の8筋突破狙いには▲8八飛でしっかり受け止めて仕掛けを封じる。】 なんと先手はここで▲8八飛!と向かい飛車にして8筋を受けます。 後手に歩を持たせると、後で右辺の駒組みをする時に歩を使った攻めを狙われる可能性があります。 よって相手の序盤の8筋突破狙いには▲8八飛!としてしっかり受け止めて相手に歩を持たせないのが大事な手となります。 この▲8八飛で仕掛けを封じる手は、久夢流では頻出する大事な手なので覚えておきましょう。 18 7四歩(73) ( 0:00/00:00:00) *この△7四歩が先手の▲8六歩を受けた手。 例えば、ここから▲3六歩 △7四歩 ▲4八玉 △4二玉に▲8六歩と仕掛ける手に△7三桂と跳ねる受けを用意しています。 19 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *ここで先に▲3六歩と突くのが後手陣を攻める含みを見せた一手。 後手が緩手を指すと、即座に仕掛ける狙いを持っています。 変化手順:ここで△7三銀なら▲6五歩 △3三銀 ▲4六銀 △4四歩 ▲3五歩 △2二角 ▲3八飛の袖飛車が狙い。 20 3三銀(32) ( 0:00/00:00:00) *後手は△3三銀と上がり、先手からの▲4六銀~▲3八飛を受けておく。 これで後手は上部からの攻めに対して備える事ができました。 しかし先手は相手に△3三銀と上がらせて、後手の囲いを△3三銀型に限定させる事が狙いでしたので不満ありません。 21 4六歩(47) ( 0:00/00:00:00) *それに対して先手は▲4六歩と突き…。 この▲4六歩が異世界 間宮久夢流の扉の鍵となります。 一体ここからどのような手順が飛び出すのでしょうか? 22 4二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4二玉と囲いに入りました。 23 4五歩(46) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント2:素早く4筋の位を取る。この位が取れれば、将棋は入玉形の展開になる。】 なんと! 突然中空に▲4五歩!と位を取りました。 将棋を指し込んだ方が見ると「なんだこれは?」と思わず言いたくなるような歩で、パッと見ただけではこの位を生かす方法が浮かびません。 振り飛車の戦法で▲4五歩と位を取る形は、『コーヤン流三間飛車 ▲4六銀型の高美濃囲い』での組み合わせで使われる事が主です。 この▲4五歩の局面のように、美濃囲いとはほど遠い形からの▲4五歩は誰も見たことがありません。 しかしこの▲4五歩こそが間宮久夢流の急所の一手で、この形から4筋の位を取る事が入玉への第一歩となるのです。 変化手順:ここで△4四歩 ▲同歩 △同銀は▲3七桂 △4五歩 ▲4六歩~▲4六同銀~▲4五歩で位を奪い返せて先手不満なし。 24 3二玉(42) ( 0:00/00:00:00) *後手は△3二玉と寄りました。 無事4筋の位が取れた局面ですが、後手からすると「こんな位を取られた所で、先手は美濃囲いではないので恐れる必要はない。」と思っているでしょう。 しかしここからとんでもない手の連続であっと言う間に『久夢流』の世界へ入っていくのでした…。 25 3七桂(29) ( 0:00/00:00:00) *先手はまず▲3七桂として4筋の位を確保し。 26 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) *後手の△9四歩に普通なら▲9六歩と受ける所ですが、次の一手が大事。 27 4八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント3:相手の端歩突きは全て無視して自陣の手を優先する。特に4筋の位は最重要で端歩位取り以上の価値がある。】 先手は無視して▲4八玉!と上がります。 この「後手の端歩突きは絶対に無視する。」のが間宮久夢流の基本思想です。 なぜなら相手からの端歩突きは、中央の位を取って入玉勝ちを狙う先手からすると不必要な手であり、端歩を受ける手を指すぐらいなら一手でも早く▲4五歩と位を取って自陣の整備に当てたいのです。 28 7三銀(62) ( 0:00/00:00:00) *後手は右銀を繰り出して棒銀を狙ってきます。 これには絶対手があり、先手は簡単に棒銀を受ける事ができます。 この「△7三銀」を見たら、後手は絶対に指すべき手があります。 ワンセットの手として覚えておきましょう。 29 6八角(77) ( 0:00/00:00:00) *「▲6八角」! これが後手の△7三銀にワンセットで覚えるべき手。 この手の理由は後でわかり、もう一つ必須のワンセットの手があるため、まずは手を進めます。 30 8四銀(73) ( 0:00/00:00:00) *後手は「△8四銀」と出て、次に△7五歩の棒銀攻めを狙ってきました。 さて、ここで先手はまたもワンセットの受けがあります。 後手の△8四銀に丸暗記で指すべき次の一手は? 31 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント4:『△7三銀に▲6八角。△8四銀(△6四銀)に▲7八金。』のワンセットの受けで相手の棒銀を封じる。】 ここで「▲7八金」が絶対の受けとなります。 というわけで…。 「△7三銀に▲6八角。△8四銀(△6四銀)に▲7八金。」はワンセットの手と覚えておきましょう。 この手を覚えておけば、相手の棒銀は全く恐れる事はありません。 32 7五歩(74) ( 0:00/00:00:00) *後手の△7五歩には。 33 7五歩(76) ( 0:00/00:00:00) *素直に▲同歩と取ります。 34 7五銀(84) ( 0:00/00:00:00) *△7五銀と出る手に。 変化手順:ここで後手が△7二飛なら▲7七金 △7五銀 ▲7六歩 △6四銀で相手の棒銀を追い返して先手不満なし。(途中の▲7七金の受けを作るために▲6八角と引いた。) 35 7六歩打 ( 0:00/00:00:00) *▲7六歩と歩を打つ手がわかりやすい受け。 36 6四銀(75) ( 0:00/00:00:00) *△6四銀と引いて局面が落ち着きます。 このように相手の棒銀には▲6八角~▲7八金と上がる手を覚えておけば全く恐れる必要はありません。 先手陣は▲6七銀・▲5七銀・▲7八金の金銀三枚の手厚い形なので、少々の攻めでは傷つけられる事はないのでした。 棒銀対策も簡単にできるのが、この間宮久夢流の長所の一つでもあります。 37 4六銀(57) ( 0:00/00:00:00) *ここから先手は玉を囲う準備をするのですが、そのために大事な一手があります。 それが▲4六銀です。 38 5三角(31) ( 0:00/00:00:00) *後手は次に△4二金上と上がって金無双の形を作りたいので、上がった金で角筋を止めないように△5三角と上がります。 先手の次の一手は玉を動かす手なのですが、一体どこに玉を収めるのでしょうか? 普通ならば▲3八玉や▲3九玉と囲って一安心という所ですが、なんと『間宮久夢流』はそんな普通の場所には玉を囲いません。 39 4七玉(48) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント5:玉の位置は4七・6七の三段目が理想!位の真下に銀と玉を置く。可能なら相手玉と同じ方向に位を取って自玉を囲う。】 今まで誰も見たことのない囲いが登場します。 ついに間宮久夢流の異世界の扉が開かれるのです…。 それが▲4七玉!です。 信じられないかもしれませんが、この4七地点が間宮久夢流にとって非常に安全な玉の位置なのです。 40 4二金(41) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4二金上と上がり、ボナンザ囲いの完成。 41 7七桂(89) ( 0:00/00:00:00) *先手は▲4七玉と囲いましたが、それだけではこの囲いは完成とは言えません。 そもそも久夢流で玉を一番囲いたい本来の場所は自陣の4七・6七ではなく、敵陣の中なのですから…。 ここから玉を敵陣へ入玉するための発射台作成の準備をしましょう。 まずは▲7七桂から。 42 7三桂(81) ( 0:00/00:00:00) *後手も桂を跳ね。 43 8九飛(88) ( 0:00/00:00:00) *▲8九飛と下段飛車に構えます。 先手が入玉するためには、この下段に飛車を置く手が必須となります。 44 9五歩(94) ( 0:00/00:00:00) *後手は手持無沙汰なので端歩を突き越します。 45 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *そして次に▲2六歩。 ここからあと9手で先手の入玉用の囲いが完成します。 変化手順:ここで後手△2六同角には▲3五歩 △同歩 ▲同銀 △1五角 ▲1六歩で後手の角が死に先手有利。 46 8一飛(82) ( 0:00/00:00:00) *後手は指す手がなくなってきました。 先手が▲4五歩と位を取っているので、後手は玉側で指したい手がないのです。 47 3八金(49) ( 0:00/00:00:00) *この▲3八金は後に大事な手で、この手を忘れると「間宮久夢流」は成立しません。 48 1四歩(13) ( 0:00/00:00:00) *後手は手がないので△1四歩と端歩を突きます。 49 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *当然久夢流は端歩を受けません。 先手は▲2五歩と伸ばし、入玉準備を整えます。 50 1五歩(14) ( 0:00/00:00:00) *後手は△1五歩と突いてきました。 51 2九飛(89) ( 0:00/00:00:00) *先手はようやく▲2九飛!と飛車を回ります。 つまり久夢流とは、この形を作る事が狙いの戦法だったのです。 52 2二銀(33) ( 0:00/00:00:00) *後手は手詰まり模様なので△2二銀と引き、先手の▲2四歩に△同歩 ▲同飛 △2三銀 ▲2九飛 △2四歩と銀冠囲いを作る罠を用意します。 53 2七金(38) ( 0:00/00:00:00) *ですが、先手は後手の銀引きを無視して▲2七金と上がる手が好手! これが間宮久夢流の決め手で知らないと指せない手です。 54 3三銀(22) ( 0:00/00:00:00) *後手は当てが外れたので、諦めて△3三銀と戻ります。 55 2六金(27) ( 0:00/00:00:00) *【★「久夢流」のポイント6:右金を▲2六金と上がって入玉陣の完成!この形を作るために絶対に▲3八金と上がろう。】 ▲2六金!と棒金に出て攻撃陣を完成させました。 この▲2六金を上がるため、絶対に▲3八金と上がっておきましょう。 ここから先手は入玉を狙うのですが…。 この続きは次回の「終盤編」で解説します。次回をお楽しみに! ------------ 作者:マイナー将棋ブログ URL:https://minorshogi.com/ 本データ掲載記事:【第2回 誰も知らないマイナー戦法】70年前の幻の入玉戦法!間宮久夢流 振り飛車型 Part1「駒組み編」 URL:https://minorshogi.com/2st-minor-tactics-that-no-one-knows-part1/ さらに詳しい変化手順解説は、↑の記事にて。 ------------