掲載:マイナー将棋ブログ 手合割:平手   手合割:平手 先手:▲7八金型天守閣囲い 後手:四間飛車 手数----指手---------消費時間-- *◆【第1回 誰も知らないマイナー戦法】平成3年に現れた伝説の囲い ▲7八金型「天守閣囲い」駒組み編 Part2 『第1回 誰も知らないマイナー戦法』は平成3年に『左美濃伝説』と言う本でのみ紹介された伝説の囲い「▲7八金型天守閣囲い」の紹介です。 ▲7八銀型天守閣美濃よりも下段に強く、完成するまでの手数が1手早いのが特徴。 「▲7八金型天守閣囲い」は開戦の手数が29手と他の急戦定跡と同じ手数で開戦する戦法。 よってこの戦法は対振り持久戦ではなく、対振り急戦にカテゴライズされる戦法です。 玉をいつもの舟囲いより堅くして仕掛けたい急戦党の人にはうってつけの戦法だ。 ------------ 作者:マイナー将棋ブログ http://minorshogi.com/ 本データ掲載記事:http://minorshogi.com/1st-minor-tactics-that-no-one-knows-part2/ ※ライセンスは最終手の棋譜コメントに後述 1 7六歩(77) ( 0:00/00:00:00) *先手居飛車の「▲7八金型天守閣囲い」を紹介。 * *初手は▲7六歩と突く手だが、ここは▲2六歩でも良い。 *先手は居飛車の対抗形になれば問題ありません。 2 3四歩(33) ( 0:00/00:00:00) *この戦法は対ノーマル振り飛車用なので、後手には△3四歩~△4四歩と角道を止める振り飛車を指してもらいます。 3 2六歩(27) ( 0:00/00:00:00) *▲2六歩と突き、先手は居飛車を宣言。 他に凝った手で天守閣囲いを狙うなら、ここで▲9六歩と突いて「▲9五歩位取り天守閣囲い」を狙うという手もある。 4 4四歩(43) ( 0:00/00:00:00) *今回は無難に△4四歩から振り飛車を指してもらいます。 5 4八銀(39) ( 0:00/00:00:00) *▲4八銀は無難な手。 * *この銀上がりなら居飛車はまだ▲5六歩・▲4六歩・▲3六歩と突く手を保留できています。 *居飛車側としては攻撃陣を早く決めてしまうと、そこを振り飛車側に狙われる可能性があるので形を決めたくないのです。 * *これはどの戦型にも共通する序盤の基本的な思想です。 6 4二飛(82) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4二飛から四間飛車。 * 「ノーマル振り飛車の王様」と言われた形。 7 6八玉(59) ( 0:00/00:00:00) *飛車を振ったので、居飛車側も▲6八玉から囲いに入ります。 8 9四歩(93) ( 0:00/00:00:00) *この△9四歩は先手が居飛車穴熊なのか打診した手。 * *▲9六歩と受ければ、先手は手数のかかる居飛車穴熊に組みにくくなります。(最善を尽くせば居飛車穴熊に組めるのだが、後手からの速効の筋が生じて楽ではない。) 9 9六歩(97) ( 0:00/00:00:00) *今回先手が狙っているのは▲9六歩と突く広さを生かす「天守閣囲い」なのでこの端歩は絶対に受ける。 *この端歩を受けないと△9五歩と突き越され、▲8七玉型を作った時に9筋が狭くなり、囲いが広いという長所がなくなってしまいます。 * *この△9四歩には絶対に▲9六歩と受けましょう。 10 3二銀(31) ( 0:00/00:00:00) *△3二銀も無難な手。 *次に△4三銀~△5四銀の玉頭銀、△3三角~△4五歩の攻め筋をいつでも作れるようにした手。 11 7八玉(68) ( 0:00/00:00:00) *先手は天守閣囲い完成のために玉を囲います。 12 6二玉(51) ( 0:00/00:00:00) *後手の振り飛車側も玉を囲います。 *振り飛車戦法の最大のメリットは堅い△8二玉型までスムーズに囲える事。 *これを生かさない手はありません。 * *さて、ここから次の居飛車側の手が地味ながら大事な手だ。 13 5六歩(57) ( 0:00/00:00:00) *▲5六歩と突くのが大事な手。 * *ここでよく▲5八金右と上がる人がいますが、この「天守閣囲い」では絶対に右金は上がってはいけません。 *その理由は手を進めるとわかります。 14 7二玉(62) ( 0:00/00:00:00) *後手は△8二玉までは一直線。 15 2五歩(26) ( 0:00/00:00:00) *天守閣囲いの狙いは、囲った後の急戦なので、この▲2五歩も天守閣囲いに組む直前には突いておきたい手です。 16 3三角(22) ( 0:00/00:00:00) *この角を上がらないと、次に▲2四歩と2筋の歩を交換されてしまいます。 *ここは△3三角と上がる一手。 17 3六歩(37) ( 0:00/00:00:00) *▲3六歩も天守閣囲いでは大事な手で、これで次に▲5七銀と上がれば~▲4六銀~▲3五歩の仕掛けが常時生じます。 *つまり▲2五歩~▲3六歩の2手で先手はほぼ急戦を狙う準備ができたのです。 * *他に相手から△4三銀~△3五歩~△3四銀の位取りのような変化を消した意味もあります。 18 8二玉(72) ( 0:00/00:00:00) *後手はすぐに動けそうにないので、当初の予定通り△8二玉から美濃囲いに組む。 *居飛車の次の一手が天守閣囲いの最初のポイントとなる一手。 19 5七銀(48) ( 0:00/00:00:00) *●「天守閣囲い」のポイント1 「▲5八金右と上がらず▲5七銀型を作るのが大事! これで1手早く仕掛ける事ができ、将来▲5八飛の筋を作れる。」 絶対に▲5八金右と上がらずに▲5七銀型を作る事。 この後登場する「天守閣囲い」は▲4九金型と非常に相性が良いのです。 20 7二銀(71) ( 0:00/00:00:00) *後手は片美濃囲いの完成。 *これでも先手の舟囲いよりは堅い陣形。 * *だが次の一手で先手の囲いは、後手の片美濃囲いよりも堅い囲いに進化します。 21 8六歩(87) ( 0:00/00:00:00) *▲8六歩で先手は正体を現す。・・・が、この時点では後手は「なんだ普通の▲7八銀型の天守閣美濃か」と油断しているはずでしょう。 22 5二金(41) ( 0:00/00:00:00) *後手は△5二金左と美濃囲いの完成。 *後手はそろそろ先手の▲7八銀型天守閣美濃対策を考えている所だろう。 23 8七玉(78) ( 0:00/00:00:00) *▲8七玉と上がり、天守閣に玉が入城。 *これで下段には相手の美濃囲いより遠くなった。 24 6四歩(63) ( 0:00/00:00:00) *後手は今回は無難に対応する方針で行きます。 *天守閣美濃は手ごわいが、上手く捌けばやれない事はないだろうと踏みましたが・・・。 * *次の一手が「天守閣囲い」の正体を現す一手。 *この一手で後手の計画を全て破綻させてしまおう。 25 7八金(69) ( 0:00/00:00:00) *先手の指は▲6九金へと伸び、▲7八金と上がった。 *これで「天守閣囲い」の完成です。 *なんと25手で完成と舟囲いと同じ手数で完成しました。 * *「天守閣囲い」とは、 平成3年に『左美濃伝説』でのみ紹介された伝説の囲い。 *それ以降一切書籍登場がなく消え去ってしまった幻の戦法なので、後手はこの囲いの事は一切知らないはず。 *「変な囲いで持久戦を狙っているのか?」と後手は思うかもしれないが、先手の狙いは全く違うのです。 * *ここから先手は急戦を狙っているからだ。 26 4三銀(32) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4三銀と角頭を守りつつ、タイミングを見て△5四銀の進出を狙います。 もし後手が△4三銀と上がる気配がなければ、先手は▲3八飛~▲3五歩と薄い3四地点を飛車で狙います。 27 4六銀(57) ( 0:00/00:00:00) *そして先手は▲4六銀と「天守閣囲い急戦」を狙います。 *この「天守閣囲い」は斜め棒銀系の急戦と非常に相性が良いのです。(将来の狙いの▲5八飛が▲4六銀と連携しやすい。) * *そして▲4六銀と出た先手の次の狙い筋は、▲3五歩~▲3四歩 △同銀 ▲5五銀~▲6四銀と浮いた△6四歩を取りにいく手。 *後手はこの手をどう受けるか? 28 5四歩(53) ( 0:00/00:00:00) *△5四歩と突き、先手の▲5五銀を消してしまうのが対斜め棒銀での基本的な受け。 これで将来△3二飛~△4二角~△5三角と4四・3五地点に角を応援に送る手も作れました。 ここで△5四歩と突かないと、先手の▲3五歩~▲3四歩~▲5五銀の攻めが生じて先手有利となります。 29 3五歩(36) ( 0:00/00:00:00) *先手は初志貫徹。 ▲3五歩から斜め棒銀で仕掛ける。 29手目の仕掛けはかなり早く、他の急戦定跡(▲4五歩早仕掛けや▲4六銀左斜め棒銀)と同じ手数で仕掛けています。 この「天守閣囲い▲4六銀戦法」は手数的には急戦にカテゴライズされるほど仕掛けのタイミングが早いのが特徴です。 30 3二飛(42) ( 0:00/00:00:00) *「攻められた筋に飛車を振る」 これは振り飛車の受けの基本。 *こうする事で先手の攻めを後手の飛車で逆用しやすく、攻めに転じやすい部分的な定跡。 * *ここで先手の次の一手は▲3四歩ではありません。 *後手陣にはよく見ると手薄い地点があります。 *そこは一体どこでしょうか? 31 5五歩(56) ( 0:00/00:00:00) *▲5五歩! この手が後手の薄い5筋を突いた攻めの好手。 この手に後手が△同歩なら▲同銀 △6三金 ▲3四歩 △同銀 ▲4四銀と出る手があって先手十分です。 32 3五歩(34) ( 0:00/00:00:00) *よって後手は5筋を諦め、3筋から捌いて勝負しようとします。 *この△3五歩に▲同銀なら△4二角 ▲3四歩 △同銀 ▲同銀 △同飛と捌かれます。 33 5四歩(55) ( 0:00/00:00:00) *先手は3筋の歩を取れないのですが、天守閣囲いの狙いは3筋だけではありません。 * *3筋が駄目なら5筋を狙う▲5四歩! *これに△同銀なら▲3四歩 △2二角 ▲3五銀~▲2四歩で棒銀成功です。 34 3六歩(35) ( 0:00/00:00:00) *後手は△5四同銀と取れないので、ここは△3六歩と伸ばし△4二角~△3七歩成を狙います。 * *ここで先手側に5筋を突破する3手1組の好手順があります。 *飛車を5筋に回して中央攻めをしたいのですが、その前に持ち駒の歩を上手く使いましょう。 * *◆ヒント:すぐに▲5八飛と回ると△4二角で一旦受けられてしまう。 △4二角を潰すには? 35 3四歩打 ( 0:00/00:00:00) *ここで▲3四歩が軽妙手。 * *これに△4二角と引けば▲3五銀~▲2四歩の棒銀突破が狙いです。 36 3四銀(43) ( 0:00/00:00:00) *よって△同銀と取るしかありません。 * *だが△4三銀が動いた事で、後手の5筋と4四地点が薄くなってしまいました。 37 5八飛(28) ( 0:00/00:00:00) *●「天守閣囲い」のポイント2 *「▲5五歩~▲5八飛と中央攻めを織り交ぜて仕掛ける。 5筋に飛車を回れる特性をフルに生かす。」 * *そこで▲5八飛! * *普通なら△4二角と受ける所ですが、今度は▲4四角と出る手があり先手有利。 *この▲4四角を作るために▲3四歩 △同銀の筋を入れたのです。 * *▲3四歩~▲5八飛の3手が見えた方はかなりの腕前で、天守閣囲いを使いこなす素質があります。 * *さて次の▲5三歩成を後手は受けねばなりませんが、ここで△6二金上と受けるか、△4五歩からの捌き合い、一体どちらがいいのでしょうか? 38 4五歩(44) ( 0:00/00:00:00) *△6二金上のような手では▲5五銀で困ります。(次に▲6四銀・▲4四銀・▲5六飛~▲3六飛と先手に攻め筋が多すぎる。) * *よって勝負を挑もうと△4五歩からの捌き合いぐらいしかないのですが、次の一手が「通常の▲7八銀型天守閣美濃では絶対に成立しない攻め」です。 *この局面だけ見れば、簡単すぎる一手でしょう。 39 5三歩成(54) ( 0:00/00:00:00) *●「天守閣囲い」のポイント3 *「角交換に強いので、王手飛車の筋を気にせず攻め合える。」 * *ここで▲5三歩成! *この手が通常の▲7八銀型天守閣美濃では「絶対にありえない手」です。 *もしここで▲7八銀・▲6九金型の天守閣美濃なら、△8八角成 ▲同玉 △4四角の王手で5三のと金を払われてしまうからです。 40 8八角成(33) ( 0:00/00:00:00) *この▲5三歩成を軽視していた後手は、ここから大駒交換をして勝負するしかありません。 * *先手は見慣れない囲いなので「攻め合いに持ち込めば案外簡単に崩せるかも・・・。」と言う希望に手を伸ばしましたが。 41 8八銀(79) ( 0:00/00:00:00) *ここで▲8八同銀が天守閣囲いの基本形。 *下段に強く、角の王手にも強い。 *インスタントながら、なかなかの堅さを誇っています。 42 4六歩(45) ( 0:00/00:00:00) *後手は△4六歩から銀を取りつつ、次に△4七歩成を狙います。 43 5二と(53) ( 0:00/00:00:00) *当然先手は▲5二とから金を取り、5筋突破を狙います。 44 5二飛(32) ( 0:00/00:00:00) *ここで強く△同飛から飛車交換! *後手としてはもうこの手順で捌き合うしかありません。 * *ここで先手が▲5三金と飛車交換を拒否するような手では、△3二飛と逃げられ、次に△6九銀を狙われてしまいます。 45 5二飛成(58) ( 0:00/00:00:00) *よって先手も踏み込む一手です。 46 5二金(61) ( 0:00/00:00:00) *△同金となり。 47 3一飛打 ( 0:00/00:00:00) *容赦なく先手は▲3一飛と詰めろ銀取りに飛車を打ちます。 次の▲7一角 △9二玉 ▲8二金~▲7二金までの詰みがあり、先手に手番まで回っている始末。 この▲3一飛が詰めろで△3四銀取りなので、後手は一旦受けてから反撃に出ます。 この続きは次回の「終盤編」となりますので、次回をお楽しみに! 続きはこちら↓ https://shogi.io/kifus/241476 ------------ ●「天守閣囲い」駒組み編 ポイントまとめ 1.▲5八金右と上がらず▲5七銀型を作るのが大事! 2.▲5五歩~▲5八飛と中央攻めを織り交ぜて仕掛ける。 3.角交換に強いので、王手飛車の筋を気にせず攻め合う。 ------------ データ名:【第1回 誰も知らないマイナー戦法】平成3年に現れた伝説の囲い ▲7八金型「天守閣囲い」駒組み編 Part2.kif 【作者:マイナー将棋ブログ(http://minorshogi.com/)】 【本データ掲載記事:(http://minorshogi.com/1st-minor-tactics-that-no-one-knows-part2/)】 ※ライセンス表記※ このデータは「クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際」の下で利用できます。 http://minorshogi.com/1st-minor-tactics-that-no-one-knows-part2/ にある作品に基づいている。 詳細はURL:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja