先手:輿水幸子 後手:速水奏 手数----指手---------消費時間-- *速水奏の連覇となるか、輿水幸子が初の栄冠を手にするか。 アイドル新人王決勝三番勝負もいよいよ大詰め。1勝1敗で相譲らず、勝負は最終局に持ち込まれた。 持ち時間は各3時間(チェスクロック使用)で使い切ると一分将棋。 先後は振り駒で決定される。 振り駒の結果、と金が四枚。 3局目は輿水が先手となった。 【神崎蘭子さんの将棋グリモワール 第0局《高垣楓の記憶》】(要会員登録) http://www.nicovideo.jp/watch/sm29950779 1 7六歩(77) *◆輿水幸子(こしみず さちこ)◆ 11月25日生まれ。山梨県出身。タイプはキュート。 趣味はノートの清書。 居飛車を中心としたオールラウンダーで、自称・カワイイ流の第一人者。 2 8四歩(83) *◆速水奏(はやみ かなで)◆ 7月1日生まれ。東京都出身。タイプはクール。趣味は映画鑑賞。 純粋な居飛車党で、独自の美学を追究する棋風はロマン派とも呼ばれる。 3 2六歩(27) *第1局は先手速水が角換わり腰掛け銀で先勝。 第2局は急戦矢倉となり、長手数の捻り合いを輿水が制した。 第3局、輿水の3手目は▲2六歩。角換わりの出だしだ。 4 3二金(41) *過去の対戦成績は1勝1敗。 この新人王決勝戦のみの対戦だ。 5 7八金(69) * 6 8五歩(84) 7 7七角(88) 8 3四歩(33) 9 8八銀(79) 10 7七角成(22) *ひらりと手が舞い角を成る。 最終局の戦型は角換わり。 11 7七銀(88) *第一局では速水が角換わりで快勝したが、今度は先後を逆にすることになる。双方どのような作戦を用意しているだろうか。 12 4二銀(31) 13 3八銀(39) 14 7二銀(71) 15 4六歩(47) 16 6四歩(63) 17 3六歩(37) 18 3三銀(42) *△3三銀を早めに決めた。 「角換わり腰掛け銀は△4二銀型で△4一玉と囲っていくのが多いところだけど、最近は△4二玉型で仕掛ける将棋も出て来てるね」(本田) 既に駆け引きは始まっているようだ。 19 3七桂(29) *小考で▲3七桂。 「最近は単桂跳ねの筋も有力よね」(片桐) 20 4二玉(51) 21 4七銀(38) * 22 7四歩(73) 23 1六歩(17) 24 1四歩(13) *角換わりの序盤ながら、両者細かく時間を使っている。 「この二人はそういうところあるよね。研究してるところでも時間を使う。特にはやみん。何を考えてるのかはよく分からないけど」(本田) 25 2九飛(28) *小考で飛車を引く。 「▲4八金2九飛型も最近流行ってるわね」(片桐) 26 7三桂(81) 27 4八金(49) 28 6三銀(72) 29 2五歩(26) 30 5二金(61) 31 9六歩(97) *こちらの端歩も打診。 32 9四歩(93) *すぐに受ける。 33 5六銀(47) *輿水は居玉を続ける。 「9筋~6筋から仕掛けられたら居玉が遠いから先手十分って言いたいのかな。一手損角換わり対急戦の後手みたいな発想だけど」(本田) 34 5四銀(63) 35 6六歩(67) *まだ居玉。 「なかなか挑発的だよね」(本田) 速水が手を止める。 「こういう挑発には大体乗ってくるよ、はやみんは」 本田と速水は同期。お互いによく知った仲だ。 11時55分。速水が席を立つ。次いで輿水を対局室を後に。このまま休憩に入るようだ。 対局は12時40分に再開される。 36 4四銀(33) *対局再開後の一手は△4四銀。 △6五歩は遠いとみて、中央から駒をぶつけにいった。 ここでなんと高垣六冠王が検討室に来訪。高垣が控え室に来るのは非常に珍しいが、部屋に入るなり調子よく駄洒落を飛ばしていた。 37 6八玉(59) *ここで玉移動。 *局後の感想* ▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛△8四角▲1五歩△同歩▲同香△1三歩が検討される。 「こうするんでしたかね」(輿水) 38 5五銀(54) *盤の中央で銀がぶつかる。 39 5五銀(56) 40 5五銀(44) 41 6一角打 *ここで反撃。次に▲7一銀と打って飛車をいじめる狙いだ。 42 4七銀打 *ふわりとした手つきで△4七銀。手つきは優雅だが指し手は過激だ。 ▲同金は△3八角で勝負あり。▲2四歩と攻め合うと見られている。 43 2四歩(25) *突き捨てはこの一手。 「△同歩は▲4七金△3八角▲2四飛△2三歩▲5二角成△同飛▲4八金△2四歩▲3八金で駒損と玉形差が大きくて後手勝てないね」(本田) 44 4八銀(47) 45 2三歩成(24) *14時30分になり、対局者におやつが運ばれた。 輿水がバニラアイスと黒蜜。速水がコーヒーゼリー。 *局後の感想* 「知り合いの真似をしてみました。美味しかったです」(輿水) 「おやつの話かい」(本田) 46 3一金(32) 47 2五飛(29) *飛車を浮いて銀に当てる。 「これはもう止まれないね」(本田) 48 5七銀成(48) 49 5七玉(68) 50 3九角打 51 6八玉(57) 52 6六銀(55) 53 7九玉(68) 54 6五桂(73) *ぱたぱたと手が進んだ。 55 7二銀打 *もはや飛車をいじめている時代ではない。 飛車の横利きを遮って▲5二角成△同玉▲6三銀打△4一玉▲5二金までの詰めろ。 56 6二金打 *しっかり駒を打って受ける。 ▲5二角成が検討される。 △同玉▲6一銀打△同金▲6三金△5一玉▲6一銀成△同玉▲6五飛△同歩▲6四桂△4九飛▲6九歩△5七角成▲6八銀の局面は難解と見られている。 △5七角成に代えて△8一角が発見された。 ▲7三金△3六角は角が攻めの急所に利いてくる。 「そうか、これがはやみんの手か」(本田) 57 2二と(23) *▲5二角成とはいかなかった。じっとと金を前進させる。これも着実な手だ。 ここで速水が長考に沈む。 本田の評価は「先手持ち」 継ぎ盤では本田と高垣のVSが始まった。目まぐるしく駒が動いて目が回りそうだ。 *局後の感想* 「▲5二角成はやり過ぎですよね」(輿水) 「△8一角で」(速水) 「ああ、そうか。そうですね」(輿水) 58 7七桂成(65) *一時間近い長考で桂を成り捨てる。 59 7七桂(89) * 60 6一金(62) 61 3一と(22) 62 7二金(61) *右辺は破られたが左側を掃除。玉の進路を横に確保する。 63 4一と(31) 64 4一玉(42) 65 2一飛成(25) 66 3一銀打 67 3三桂打 68 5一玉(41) *ノータイムの応酬。 69 7三銀打 *ハッとする捨て駒。 70 7三金(72) 71 3一龍(21) *控え室の検討通りの手順だ。どちらが読み勝っているのか。 72 6二玉(51) 73 7一銀打 74 6三玉(62) *△8二銀不成まで進むかと思われたが、ここで輿水の指し手が止まる。その局面から本田が高垣を相手に先手を持って指しているが、結果は芳しくないようだ。 ▲8二銀不成に△5六角が△5七角成▲6八桂△7八角成▲同玉△6七馬▲8八玉△7七銀成▲9八玉△8八金▲9七玉△8七成銀までの詰めろ。 以下、空中を泳ぐ後手玉がなかなか捕まえられない一方、先手は後手の攻めを振りほどけないでいる。 高速で動いていた継ぎ盤の動きが止まる。 本田が険しい表情で継ぎ盤を睨む。まるで対局者のようだ。 「あああっ!」と本田が悲鳴に近い声を上げ、▲5五桂を打ちつけた。 75 5五桂打 *桂だ。 76 5五銀(66) *「桂を捨てても銀をバックさせることで攻めの速度が入れ替わるんだね」(本田) 「なるほど」(高垣) 77 8二銀(71) *銀が後退したため△5六角が詰めろにならない。 78 7二金(73) 79 6一龍(31) 80 6二金(52) 81 7三金打 82 5四玉(63) 83 6二金(73) *▲4五金の一手詰の詰めろ。 84 5六角打 *「▲4五金を受けて△7八角成▲同玉△6六桂打▲8八玉△7八金打 ▲9七玉△8八銀打 ▲9八玉 △8九銀打までの詰めろを掛けてる。詰めろ逃れの詰めろだね」(本田) 85 4五金打 *それでも▲4五金。 86 4五角(56) 87 4五桂(37) *ここで▲同歩は次に▲7二金が詰めろになるが、△6六桂が詰めろで後手の一手勝ち。 「▲同桂は次に▲5三桂成△同玉▲5二龍△4四玉▲4五飛打△3三玉▲4三飛成△2四玉▲2二龍△1四玉▲2五角打までの詰めろだね」(本田) 88 5七角成(39) 89 6八歩打 90 4六銀(55) *要の歩を抜いて▲5三桂成以下の詰めろを受ける。後手は入玉の可能性も見える。 *局後の感想* 代えて△4六馬▲5三桂成△4五玉▲7二金△6六桂が検討されたが、▲4八飛(詰めろ)△5四歩▲6三角で後手自信なし。 91 5三桂成(45) 92 4五玉(54) 93 5八歩打 *馬に働きかける。 94 5六馬(57) 95 6七角打 *角を合わせて攻防に邪魔な馬を消しに行く。 96 6七馬(56) *▲同歩は△5七歩▲同歩△同銀成が詰めろ。 ▲同金も8筋が薄くなるので△8六桂~△8七銀のような筋が生じる。 97 6七金(78) *強く金で取る。 「これはさっちー勝ちにいったね」(本田) 98 3六玉(45) *入玉を目指す。先手の入玉は難しいため、入ってしまえば事実上の後手勝ちになる可能性はある。 *局後の感想* 「▲2一龍があって、縦の利きを遮断する手段がないのよね」(速水) 後手の入玉は困難と見ていたようだ。感想戦はここで打ち切られた。 99 7二金(62) *「落ち着いてるなぁ」(本田) 100 8六桂打 *手筋の桂で勝負をかける。 101 8六歩(87) 102 8七銀打 *銀で上部を抑えた。受けは難しい。この瞬間に後手玉を寄せきれるか。 103 3九飛打 *しっかり時間を使って飛車を打つ。 後手玉に詰みがあると見られている。 104 3七角打 105 4八桂打 106 3五玉(36) *△4五玉は▲5六金△3五玉▲2五金打△同玉▲2一龍以下詰み。 107 3七飛(39) 108 3七銀成(46) 109 4六角打 110 4六玉(35) 111 5七金(67) 112 3五玉(46) 113 4六角打 114 2六玉(35) 115 2一龍(61) *ここで速水が投了を告げた。終局時間は17時33分。 消費時間は▲輿水2時間45分、△速水2時間58分。 アイドル新人王戦三番勝負は輿水が初の優勝に輝いた。