先手:先手居飛車穴熊 後手:後手三間飛車真部流 手数----指手---------消費時間-- *…ノーマル三間飛車、美しいですよね。 その中でも真部流の美しさは別格です。 しかし今では端攻めの準備が優先され、 とりあえず6四銀型の四枚美濃を素直に組みにいく人は少なくなっています。 何故でしょうね? 道場で久々にこの戦型を指されたので、 (棋譜貼りのテストも兼ねて)少し考えてみました。 1 2六歩(27) *私が先手。道場では四段で指してます。 居飛車党過激派ゆえ初手は2六歩です。 稀ながら7六歩や5八金左も指します。 2 3四歩(33) *相手は某都会県でかつてレーティング選手権の代表を獲っている感じの人です。 詳細は伏せます。 3 7六歩(77) *評価値 1/2 三手目2五歩も良い手だと思います。 4 4四歩(43) *評価値 +1 四手目の最善手は何か…? 難問です。 5 2五歩(26) *私の派閥では2五歩もすぐに決めます。 6 3三角(22) *ノーマル向い飛車に対しては、何も考えずに左美濃~銀冠~銀冠穴熊と適当に組むだけでもそうそう作戦負けはしません(理論上)。 それよりも後手が3三銀から飛先不突矢倉を目指してきた時の方が面倒です。 7 4八銀(39) *6八玉の方が手広い可能性はあります。 …ただ後手に居飛車で来られると怖い。 8 3二飛(82) *善悪はともかく美しい一手。 9 6八玉(59) 10 4二銀(31) 11 7八玉(68) *7八銀として升田美濃~銀冠~銀冠穴熊の順に固めるプランもあります。 端桂や玉頭銀への対応に気を遣う必要がほとんどなくなる利点が大きく、 将来的にはそちらの組み方が主流となっている可能性もありそうですね。 12 6二玉(51) 13 7七角(88) *対三間飛車で5六歩をどこで突くべきかは意見の分かれるところですが、 そんなに急ぐ必要はないと思われます。 6四銀に6六銀と対抗しないと死んでしまう病気の人は5四歩に5六歩として後手の鏡写しで指すと良いでしょう。 14 7二銀(71) *シンプルに7二王から囲うのも有力で、 愛穴熊の可能性も残るため逆に先手の指し手を制限している意味があります。 私もいつの日か三間飛車穴熊対策の決定版を作りたいものですが難しいです… 15 8八玉(78) 16 7一玉(62) 17 9八香(99) *代えて7八金~5六歩~5七銀みたいな感じで、遅石田組み換えを頑張って妨害しに行く一派もあります。 好みの問題ですね。 18 5四歩(53) 19 9九玉(88) 20 5三銀(42) 21 8八銀(79) *6四銀~5五歩と中央制圧される手が気になりますが、4四歩が自動的に疑問手になるので後手としても実行しにくいところです。 具体的には5六歩の反発や浮き飛車からの3六飛を狙って駒を組んでいくのでしょう。 22 5二金(41) *ここに金が居るということは即ち、 桂頭/玉頭が比較的薄くなおかつ5二飛と比較的廻りにくくなっていることを意味し… 従って先手は暫し心安らかになります。 23 7八金(69) *真部流/コーヤン流はタテの将棋です。 7九金と構える利点はほぼありません。 24 6四歩(63) 25 5六歩(57) *6四銀~6五銀の含みが消えてから5六歩を突くことで、先手の密かなる悩みのひとつが未然に隠蔽されています。 26 7四歩(73) 27 5九金(49) *部分的にこれが最もバランスの良い形。 終盤に高確率で最速の寄せとなる6九銀を消し、金銀の結合を密にし、6八角成に同金上と良い感じに取れるようにしています。 コーヤン流相手に角を引いた場合この状態で戦いになることが多いです。 28 6三金(52) 29 3六歩(37) *もっと急いで突くべきかもしれません。 30 6五歩(64) *美濃囲いは桂馬を跳ばないでおいた方が大抵囲いとしては堅いのですが、 この戦型では直射角行に曝されることが特に多いので難しいところです。 31 5七銀(48) *6五桂の褌が消えたのを見届けてから、 5七銀を上がるのが簡明な真部流対策。 ここに右銀がいれば5五歩~5二飛からスマートに中央制圧される虞はありませんし、 逆に5二飛~5五歩なら動作が重いので薄い角頭をぺちぺち叩いて反撃しやすいです。 32 6四銀(53) 33 6九金(59) *5九角~3七角のコースを作りました。 角頭を銀で攻めて貰う分には大歓迎で、 中央や小鬢の薄くなったところに飛車角の利きをささっと集中させ、貰った持ち歩も活用して暴れ廻るのが居飛車穴熊の呼吸です。 7五歩~7六歩と歩で追われた場合は、 統計学的に見て駄目なことが多いです。 34 9四歩(93) 35 9六歩(97) *大抵単なる二手パスですが私は端を受けるのが好きです。でも疑問手。 これを活かすためには銀冠穴熊に組むか、 9四桂と打つための足場にする(本譜)か、 9五歩を手抜いて9六歩の瞬間寄せるか、 9六香と上がって無理攻めと見切る(!?)か。 36 7三桂(81) *本気で端一ヶ所に命を懸ける気なら、 5三銀型で銀冠を急ぐか6二銀と引く方がバランス的には優ると思います。 37 7九金(69) *自玉窒息のリスクを少しだけ高めます。 更に銀冠穴熊を目指す手もありますが、 4二角から玉頭を攻められる展開になると形勢はともかく後手の駒全てが最善形になるので気乗りはしませんね。 まあ時々指すんですけど。 38 8四歩(83) *多くの場合9五歩より高価な一手です。 角でこの歩をただ取りしに行くと大抵の場合幸せになれません。 39 4六歩(47) *教科書でよくある(?)4五歩早仕掛け。 羽生の頭脳に似た形が載ってた気もしますが部室に寄贈したため真相は謎。 代えて鷺宮定跡風に3八飛 2二角 8六角(2四歩~2三銀狙い)と動いても手になったかもしれません。 いずれにせよ9六歩型のため後手から常に端攻めがあり、条件は悪いです。 40 8二玉(71) *結局は入城しないとやってられません。 41 2四歩(25) *歩を渡さないよう先に4五歩も有力。 この場合 5五歩 2四歩 同角が問題だが、 同飛 同歩 4三角 2二飛4六銀と粗雑に捌いて意外と居飛車がやれているのかも。 42 2四歩(23) *ここで突き捨てれば同角を警戒せずに済むものの、後手の端攻め開始も早まる。 43 4五歩(46) *斯くして無事に角行の死に場所を発見。 角筋を止められても4四歩は先手だし、 鮒囲いの定跡と違って4八飛の心強い応援も期待できる。 何より自陣の歩を沢山使えて心地良い。 44 9五歩(94) *しかしこれが良い手。 45 9五歩(96) 46 9七歩打 47 9七香(98) *代えて 同銀 8五桂 8八角 9七桂成 同香という若干気持ち悪い取り方もあった。 (端の香車が狙われにくい形で敵陣を睨んでおり、今この一瞬は大駒並みに働く) 48 8五桂(73) 49 4四角(77) 50 4二飛(32) *形。 ここから頃合いをみて 4四飛 同歩 同角(~3三角打)で仕留めるのが、三間飛車党のお約束な勝ちパターン。 51 6八銀(57) *これも形…と見せかけて実は緩手かも。 このふがいない瞬間に限っては9六香(~8六歩)が成立した可能性があった。 52 9七桂成(85) *一見詰めろ。 53 9七銀(88) *どける時に銀をどかして8八金上なり8八桂なり8八玉なり補充要員を押し込むのが、 端攻めで即死しないためのコツである。 54 9二香打 *形。 55 9四桂打 *桂馬は本来端の受けには不向きなので、 香車と換えられるうちに換えておきたくなるのが人情。 四段目なら流石に9三歩打ちからの地獄突きで殺されることはそうそうないと信じたい。 56 9四香(92) 57 9四歩(95) 58 8五桂打 *自然。 59 9八香打 *とにかく頭の弱い子(桂馬)が露出することはなるべく避ける。 60 9四香(91) 61 9五歩打 *歩をケチって先手を取らずに受けることは、 相手の攻め駒が一枚増えることを意味する。 駒台の邪魔くさい歩はこのような時のために存在する。 62 9五香(94) 63 9六歩打 * 64 9七桂成(85) 65 9七香(98) 66 8五銀打 67 8八桂打 *ここまでの一連の流れはほとんど必然。 次に9五歩と取れば先手は端を制圧できるので、後手は少し忙しくなっている。 68 4四飛(42) *9六香が自然だが、先手は何でも同香同香と取って、香を取られたら9八香と据え直して悪くない(気がする)。 69 4四歩(45) 70 4四角(33) *勝負所。直射角行に曝されており危険。 しかし振り飛車側は囲いの特性上反動を全く気にせず7五歩と突けるため、手段は限られる。 71 7七桂(89) *パンツアタック。 72 9六香(95) *手が難しかった。 正解は私には判らない。 73 9六香(97) *端の戦いも基本的には普通の玉頭戦と同様、 「数こそが正義」といえる。 飛翔するパンツの群れが後手の厚みの要たる8五銀を除去することにより、 先手玉に一時の安らぎが約束される。 74 9七歩打 *実際のところ見た目ほど怖くはないが、 放置するとなると精神的負荷は大きい。 75 8五桂(77) *取ってくれば4八飛で角の進退を問う。 76 4六角打 *ここで私は渾身のイリュージョンを放った。 (五手一組) 77 9一飛打 *※ここは9三桂成~8二銀~4二飛が普通の寄せで、それで何の問題もないのだが… 78 8五歩(84) 79 7一銀打 *この一瞬の煌めきに全てを懸ける。 80 7三玉(82) 81 9三飛成(91) *この一瞬で逆転である。 82 8三銀(72) *※実際には8三桂合で何事もなく先手の負けなのだが、 7一銀の特殊効果によって対局者・観戦者は感想戦ですら全員気付かず通り過ぎている。 実は私の終盤力の約三割を占めるこの技術、 文献としては唯一「月下の棋士」にのみその存在がそれとなく示唆されている。 83 8二龍(93) * 84 8四玉(73) 85 9三香成(96) *お粗末様でした。 86 7三金(63) 87 8三成香(93) 88 8三金(73) 89 9三銀打 *まで、八十九手。 文責:あさげ (http://ameblo.jp/thousandays)